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阿佐東線

Asatō Line

阿佐東線(あさとうせん)は、四国を走る全長10.0キロメートルの第三セクター鉄道路線で、徳島県海陽町の阿波海南から高知県東洋町の甲浦に至る。阿佐海岸鉄道(略称「阿佐鉄」)唯一の路線であり、軌間1,067ミリメートルの狭軌・単線・全線非電化で、両端の起終点は徳島県と高知県の県境をまたいでいる。2021年(令和3年)12月25日以降は、線路と道路の双方を走行できるデュアル・モード・ビークル(DMV、トヨタ・コースターを改造した車両)によって全便が運行されており、同社はこれを世界初のDMVによる本格的な営業運行と位置づける。これは長らく厳しい経営状況に置かれてきた地方路線を維持するための方策であった。

2 km
阿佐東線の路線図 · 境界: 国土数値情報(国交省)・GSI

歴史

この路線は、はるかに大きな未成計画の生き残った一部である。改正鉄道敷設法に基づき、徳島県の牟岐と高知県の後免を室戸岬沿いに結ぶことを意図した阿佐線(あさせん)の一部として計画された。徳島県側の北端である牟岐 - 海部間は1973年(昭和48年)10月1日に日本国有鉄道の牟岐線として開業し、高知県側の西端である奈半利 - 後免間は最終的に2002年(平成14年)7月1日に土佐くろしお鉄道の阿佐線として開業した。中間の甲浦 - 奈半利間は建設されないまま道路で結ばれる未成区間として残り、阿佐東線は当初計画の東側の末端部分となっている。

海部 - 甲浦間の建設は、工事がほぼ完成していたにもかかわらず、1980年に国鉄再建法によって凍結された。徳島県などの地元は、ほぼ完成していたこの路線を放棄するのではなく、1988年に第三セクター会社で引き受けることを決定し、阿佐海岸鉄道を設立して1989年(平成元年)3月29日に工事を再開した。開業によりこの路線は、1944年に箸蔵登山鉄道が廃止されて以来、徳島県内の鉄道が全て国鉄(後のJR四国)のみとなっていた状況において、同年以来初の私鉄かつ初の第三セクター鉄道路線となった。

海部 - 甲浦間は1992年(平成4年)3月26日に開業し、地元紙はこれを70年越しの悲願が実ったものと報じた。開業当初から全線でワンマン運転が行われ、JR四国の特急列車が乗り入れた。特急「うずしお」は開業時から甲浦まで、「剣山」は1998年から、「むろと」は1999年から乗り入れた。JR四国牟岐線とともに2002年7月1日から「阿波室戸シーサイドライン」の愛称が設定され、2006年には駅ナンバリング(路線記号AK)が導入された。その後、牟岐線との直通運転は縮小と一部再開を繰り返し、最後の特急「剣山」の乗り入れは2011年に廃止された。

それでも阿佐東線の利用は極めて少なく、輸送密度は1日あたり数百人程度にとどまり、長期的な存続が危ぶまれていた。2011年から、徳島県と鉄道は、利用の少ない路線における従来の気動車に代わる安価な手段とみなされた、線路と道路を直通できるデュアル・モード・ビークルの検討を進め、実証運行を行った。2016年2月には徳島県が今後10年以内の営業運行を目指す方針を発表し、2017年2月にはDMVを2020年までに導入することが正式に決定された。この計画では、車両が一般道をバスとして走行し、切替地点で鉄道に移行して既存の線路を走り、再び道路に戻って線路のない目的地まで到達することが構想された。

DMVの運行には、線路を物理的に作り替える必要があった。2019年夏には、モードチェンジ施設を建設するため阿佐東線が牟岐線から切り離され、トヨタ・コースターを大幅に改造したDMV93形と称する3両の車両が2019年中に完成・公開された。2020年11月1日には牟岐線の阿波海南 - 海部間がJR四国から移管されて阿佐東線に編入され、2020年11月30日をもって従来の気動車(ASA-100形・ASA-300形)による運行が終了した。その後、阿波海南・甲浦のモードチェンジ施設が完成するまで、2020年12月1日から代行バスが路線を運行した。

当初2020年を目指していたDMVへの移行は、新型コロナウイルスの流行や、2021年半ばに前輪を支える部品の補強が必要と判明したことなどにより繰り返し延期され、2021年12月25日にようやく営業運行が始まり、日本の報道では世界初のDMVによる営業運行ともてはやされた。現在、列車は阿波海南文化村停留所をバスとして発車し、阿波海南で線路に入り、南の甲浦まで走行し、再び道路を経由して道の駅宍喰温泉まで運行する。土休日には1往復が旧阿佐線のルートに沿って室戸岬方面まで延長される。この変更により、阿波海南・甲浦の鉄道起終点は信号場かつ道路との接続点となり、鉄道事業法に基づく鉄道駅は海部駅と宍喰駅のみとなった。少数のDMV車両ゆえに、その後も2023年・2024年にダイヤの減便や検査による運休が繰り返されており、この運行がなお綱渡りであることを示している。

年表

  • 197310月1日:阿佐線の徳島県側にあたる牟岐 - 海部間が日本国有鉄道牟岐線として開業。
  • 1980国鉄再建法により海部 - 甲浦間の工事が凍結される。ただしこの時点で工事はほぼ完成していた。
  • 1988徳島県などがほぼ完成していた路線を第三セクター会社で引き受けることを決定し、阿佐海岸鉄道を設立。
  • 19893月29日:阿佐海岸鉄道により海部 - 甲浦間の工事が再開される。
  • 19923月26日:海部 - 甲浦間が阿佐東線として開業。ワンマン運転を開始し、JR四国の特急「うずしお」が甲浦まで乗り入れ開始。
  • 19983月14日:特急「剣山」が乗り入れを開始。
  • 19993月13日:特急「うずしお」の系統分割に伴い、代わって特急「むろと」が乗り入れ開始。
  • 20027月1日:JR四国牟岐線とともに「阿波室戸シーサイドライン」の愛称使用を開始。同日、旧阿佐線西側の奈半利 - 後免間が土佐くろしお鉄道阿佐線として開業。
  • 20063月1日:全駅で駅ナンバリング(路線記号AK)を導入。
  • 20113月12日:特急「剣山」の乗り入れが廃止され、当線への特急乗り入れが終了。
  • 20162月:徳島県がDMVを今後10年以内に営業運行する方針を発表。
  • 20172月:DMVを2020年までに導入することが正式に決定される。
  • 2019夏:DMVのモードチェンジ施設建設のため、阿佐東線が牟岐線から分断される。DMV93形3両がこの年に完成・公開(10月5日に全3両公開)。
  • 202011月1日:牟岐線の阿波海南 - 海部間がJR四国から阿佐東線に編入。11月30日に気動車(ASA-100形・ASA-300形)の運行を終了し、12月1日から代行バスの運行を開始。
  • 202112月25日:阿波海南 - 甲浦間(道の駅宍喰温泉・室戸岬方面へのバス区間を含む)でDMVの営業運行を開始。世界初のDMV営業運行と報じられ、鉄道の起終点は信号場となる。
  • 20233月11日:ダイヤ改正により、平日(火・水曜は8往復)および土休日のDMV運行本数を減便。
  • 20243月16日:ダイヤ改正で平日を1日8往復に統一。10月3日には部品の微細な不具合確認により3両全車を運休して詳細検査を行い、10月12日始発から運行を再開。

出典