歴史
広見線は、新可児駅を境に二つの異なる成り立ちを持つ点で特徴的であり、その二つの区間はそれぞれ別の会社が別の目的で建設したものである。新可児付近から御嵩に至る東側の区間は、軌間762ミリメートルの軽便鉄道として、初代の東濃鉄道(1944年設立の同名会社とは別会社)が建設したことに始まる。東濃鉄道はすでに1918年に新多治見駅 - 広見駅間を開業させており、1920年8月21日には、これを広見駅(現在の可児駅付近)から御嵩駅(現在の御嵩口駅)まで延伸した。のちに新多治見駅 - 広見駅間は国有化されて太多線となり、広見駅 - 御嵩駅間は後継会社である東美鉄道が承継した。
西側の区間は、初代の名古屋鉄道によって別個に開発された。名古屋鉄道は1925年4月24日、今渡線として犬山口駅 - 今渡駅(現在の日本ライン今渡駅)間を開業させ、1929年1月22日にはこれを今渡駅から広見駅(現在の新可児駅)まで延伸し、今渡線を広見線と改称した。一方、1928年には東美鉄道が東側の全線を1,067ミリメートルに改軌・電化し、国鉄広見駅の移転に伴って一部経路を移設するとともに、新たな途中駅を開業させた。これにより二つの路線は広見で末端どうしが接したが、依然として別々の会社の所有のままであった。
両鉄道は第二次世界大戦中に統合された。1943年3月1日、名古屋鉄道が東美鉄道を合併し、東側の新広見駅 - 御嵩駅間は、八百津方面への支線とともに東美線として再編された。戦後、犬山周辺の路線網は整理され、1946年3月1日には旧来の犬山口駅 - 富岡前駅間の連絡経路が廃止されて新たに犬山駅 - 富岡前駅間が開業し、路線の起点が犬山駅へと移された。1948年5月16日には東美線の新広見駅 - 御嵩駅間が正式に広見線へ編入され、伏見口駅 - 八百津駅間の支線は八百津線として分離された。
直通する路線としての現在の姿は1950年代初頭に整った。1952年4月1日、御嵩口駅 - 御嵩駅間の短い最終延伸が開業して全通し、それまでの終点であった御嵩駅は新しい駅に道を譲って御嵩口駅と改称された。近代化はその後の20年間にわたって進められた。東側の新広見駅 - 御嵩駅間の架線電圧は1965年3月21日に直流1,500ボルトへ昇圧され、より利用の多い犬山駅 - 新広見駅間は1967年から1970年3月6日に完成した最後の区間まで段階的に複線化された。可児市の市制施行に伴い、1982年4月1日には新広見駅が新可児駅に、伏見口駅が明智駅に改称された。
2000年代以降、この路線の役割はますます新可児駅を境に分かれていった。明智駅から分岐していた支線の八百津線は2001年10月1日に廃止された。2003年3月27日のダイヤ改正では、犬山線と御嵩方面とを結ぶ平日昼間および休日の直通運転の大半が取りやめられ、多くの列車が新可児駅で系統分割されるようになった。さらに2008年6月29日には新可児駅 - 御嵩駅間でワンマン運転が始まり、以後すべての列車が新可児駅止まりとなって、直通する旅客は同駅で乗り換えて中間改札を通る必要が生じた。ICカード対応機器は新可児駅までしか整備されず、2007年8月8日の磁気カード「トランパス」も2011年2月11日のICカード「manaca」も、外側の区間には導入されなかった。2023年3月18日には明智駅の交換設備が撤去されて新可児駅 - 御嵩駅間に進入できる列車が1本に限られ、2024年3月16日には犬山駅 - 新可児駅間にもワンマン運転が拡大されて、名古屋への直通よりも線内折り返しが中心となった。
現在、利用の多い犬山駅 - 新可児駅間は頻繁に普通列車が運行され、平日朝には犬山線を経由して名鉄名古屋・中部国際空港(セントレア)方面へ直通する上り列車が設定されている一方、約7.4キロメートルの閑散とした新可児駅 - 御嵩駅間は2両編成1本が区間内を往復している。この外側の区間は長く存廃が問われてきた。名鉄は2007年に廃止の可能性を初めて示し、沿線自治体はその後何年も赤字を補填してきた。2026年には、可児市・御嵩町・八百津町の3市町が、利用者の減少と年間約3.4億円に上る地元の財政負担などを理由に、新可児駅 - 御嵩駅間をめぐる名鉄とのみなし上下分離方式による存続協議を終了することで合意し、これを受けて名鉄は、時期は未定としつつ、同区間の鉄道事業を廃止する方向へ進む姿勢を示した。
年表
- 1918初代の東濃鉄道が最初の路線として新多治見駅 - 広見駅間を開業(同区間はのちに国有化され太多線となる)。
- 19208月21日:東濃鉄道が軌間762mmの軽便鉄道を広見駅(現在の可児駅付近)から御嵩駅(現在の御嵩口駅)まで延伸開業。
- 19254月24日:名古屋鉄道(初代)が今渡線として犬山口駅 - 今渡駅(現在の日本ライン今渡駅)間を開業。
- 19269月23日:東濃鉄道が広見駅 - 御嵩駅(現在の御嵩口駅)間を東美鉄道へ譲渡。
- 192810月1日:東美鉄道が全線を1,067mm軌間に改軌・電化し、国鉄広見駅の移転に伴い線路を移設、途中駅を新設。
- 19291月22日:名古屋鉄道が今渡駅 - 広見駅(現在の新可児駅)間を開業し、今渡線を広見線と改称。
- 19433月1日:名古屋鉄道が東美鉄道を合併。東側の新広見駅 - 御嵩駅間が東美線となる。
- 19463月1日:犬山口駅 - 東犬山駅 - 富岡前駅間を廃止し、犬山駅 - 富岡前駅間が開業。起点が犬山駅となる。
- 19485月16日:東美線の新広見駅 - 御嵩駅間を広見線に編入。伏見口駅 - 八百津駅間が八百津線となる。
- 19524月1日:御嵩口駅 - 御嵩駅間が開業して全通。それまでの御嵩駅を御嵩口駅と改称。
- 19653月21日:新広見駅 - 御嵩駅間および八百津線の架線電圧を1,500Vに昇圧。
- 19703月6日:犬山駅 - 新広見駅間の複線化が最後の区間の完成をもって完了(複線化は1967年から段階的に実施)。
- 19824月1日:可児市の市制施行に伴い、新広見駅を新可児駅に、伏見口駅を明智駅に改称。
- 20086月29日:新可児駅 - 御嵩駅間でワンマン運転を開始。すべての列車が新可児駅止まりとなる。
- 20233月18日:明智駅の行き違い設備の撤去に伴い、新可児駅 - 御嵩駅間は1本の列車しか入線できなくなる。
- 20243月16日:犬山駅 - 新可児駅間でもワンマン運転を開始。名鉄名古屋方面への直通がほぼなくなり、線内折り返しとなる。
出典
事実確認日:2026年6月14日