歴史
運賃計算上・運用上は1路線として扱われるが、実際には宝山寺駅で接する2つの別々のケーブルカーから構成されている。下側の区間である鳥居前駅 - 宝山寺駅間の宝山寺線(ほうざんじせん)は、生駒聖天と呼ばれる宝山寺への参拝客を運ぶために建設され、日本最初の営業用ケーブルカーとされている。上側の区間である宝山寺駅 - 生駒山上駅間の山上線(さんじょうせん)は、山上にある生駒山上遊園地へのアクセス路線として建設された。下側の路線は大阪や奈良のベッドタウンとして発展した住宅地を通るため、ケーブルカーとしては珍しく、本格的な通勤路線としても機能している。
事業は開業前から始まっていた。1913年9月、生駒山鋼索電気軽便鉄道という会社が生駒 - 宝山寺間の免許を取得し、1914年7月に正式に設立されると、直ちに生駒鋼索鉄道(いこまこうさくてつどう)へと社名を変更した。1916年には、今日の近鉄の前身である大阪電気軌道(大軌)が経営に参画した。1918年8月29日、生駒鋼索鉄道は鳥居前駅 - 宝山寺駅間を開業し、生駒山にケーブルカーの営業運転が始まった。
その後、路線は大阪電気軌道の所有のもとで拡張された。大軌は1922年1月25日に生駒鋼索鉄道を合併し、1924年2月2日には上側の宝山寺 - 生駒山上間の免許を取得した。1926年12月30日には下側の区間に2本目のケーブル軌道である宝山寺2号線が開業し、鳥居前駅 - 宝山寺駅間が複線化された。上側の山上線である宝山寺駅 - 生駒山上駅間は1929年3月27日に開業し、鳥居前から生駒山頂までの全線が開通した。
第二次世界大戦は路線の両区間を中断させた。1944年2月11日、山上線が戦時下の鉄道整理にともなって不要不急線として休止され、同年7月には宝山寺2号線が休止されて設備が撤去され、下側の区間は単線に戻された。山上線は1945年8月1日に運行を再開し、1953年4月1日には宝山寺2号線が復活して下側の区間が再び複線化された。宝山寺線は日本で唯一の複線のケーブルカーであるが、2本の線路はそれぞれ宝山寺1号線・宝山寺2号線という別々の路線として運用され、2号線は通常、多客期や1号線の点検時にのみ運行される。
1979年7月20日、鳥居前駅が生駒山上寄りに約70メートル移転し、宝山寺線の営業キロが0.1キロメートル短縮された。2000年には車両が一新された。3月1日には宝山寺1号線に新型のコ11形が登場し、ブルドッグの顔をした「ブル」と三毛猫の顔をした「ミケ」が、日本で現役最古のケーブル車両として知られていた1928年製の車両に代わって運転を開始した。3月18日には、オルガンをイメージした「ドレミ」とケーキをイメージした「スイート」(いずれもコ15形)が山上線で運転を始めた。引退したコ1形は生駒山麓公園に保存された。
2020年4月から5月にかけて、山上線は新型コロナウイルス感染症対策のため数日間運休した。2021年9月28日、生駒鋼索線は生駒山上遊園地の飛行塔とともに、土木学会選奨土木遺産に認定された。今日、この路線は下半分で山中腹の通勤客を、上半分で山上遊園地への来園者を運んでおり、犬・猫・オルガン・ケーキをかたどった車両によって、日本でも有数の知名度を誇る観光ケーブルカーの一つとなっている。
年表
- 19139月18日:生駒山鋼索電気軽便鉄道が生駒 - 宝山寺間の鋼索線の免許を取得。
- 19147月10日:生駒山鋼索電気軽便鉄道として会社設立。同時に生駒鋼索鉄道に社名変更。
- 1916大阪電気軌道(大軌)が経営に参画。
- 19188月29日:生駒鋼索鉄道が鳥居前駅 - 宝山寺駅間(宝山寺線)を開業。日本最初の営業用ケーブルカー。
- 19221月25日:大阪電気軌道が生駒鋼索鉄道を合併。
- 19242月2日:大阪電気軌道が宝山寺 - 生駒山上間の免許を取得。
- 192612月30日:宝山寺2号線が開業し、鳥居前駅 - 宝山寺駅間が複線化。
- 19293月27日:山上線(宝山寺 - 生駒山上間)が開業し、生駒山頂までの全線が開通。
- 19442月11日:山上線が不要不急線として休止。7月には宝山寺2号線が休止・設備撤去され、宝山寺線が単線化。
- 19458月1日:山上線の運行を再開。
- 19534月1日:宝山寺2号線が運転を再開し、宝山寺線が再び複線化。
- 19797月20日:鳥居前駅が生駒山上寄りに約70m移転し、宝山寺線の営業キロが0.1km短縮。
- 20003月1日:宝山寺1号線に新型コ11形「ブル」「ミケ」が登場し、日本最古の現役ケーブル車両として知られた1928年製車両を置き換え。3月18日には山上線にコ15形「ドレミ」「スイート」が登場。
- 20204月29日 - 5月6日:新型コロナウイルス感染症対策のため山上線を終日運休。
- 20219月28日:生駒鋼索線が生駒山上遊園地の飛行塔とともに土木学会選奨土木遺産に認定。
出典
事実確認日:2026年6月14日