JR線·約4分で読めます

伊豆急行線

Izu Kyūkō Line

伊豆急行線(いずきゅうこうせん)は、伊豆急行が運営する営業距離45.7キロメートルの鉄道路線で、静岡県の伊豆半島東部の海岸沿いを、伊東市の伊東駅から下田市の伊豆急下田駅まで南下する。全線が1,067ミリメートルの狭軌・単線で、直流1,500ボルト・架空電車線方式により全線電化されており、両端を含めて16の駅がある。沿線は温泉街やゴルフ場が点在する観光地として知られ、海岸沿いを走るものの実際に海が見える区間は半分程度で、山が海までせり出す伊豆半島特有の地形のため、全線の約38パーセントがトンネルとなっている。

河津町東伊豆町伊豆市10 km
伊豆急行線の路線図 · 境界: 国土数値情報(国交省)・GSI

歴史

伊豆東海岸に鉄道を通す構想は、伊豆急行という会社よりはるか以前からあった。当初は日本国有鉄道(国鉄)が東海道本線の熱海から下田方面へ支線を建設する計画だったが、1930年代には世界恐慌下で浜口雄幸首相のもとに進められた緊縮財政により予算が限られ、さらに技術上の問題も重なった。まず北側の区間のみが伊東線として建設され、最初の8.7キロメートルの熱海 - 網代間が1935年3月30日に、続く8.3キロメートルの網代 - 伊東間が1938年12月15日に開業し、いずれも開業時から直流1,500ボルトで電化されていた。それより南への建設は遅れ、やがて第二次世界大戦の勃発により中止された。

伊東以南の工事が再開されたのは戦後のことで、民間の東京急行電鉄(東急)が下田までの建設の権利を取得し、この区間の建設と運営のために伊豆急行を設立した。伊東 - 伊豆急下田間の全線は1961年12月10日に開業した。建設は困難で危険を伴うものだった。路線が古くからの温泉地を通るため、トンネルを掘る際に源泉が地盤に浸み込み、たびたび落盤事故を引き起こし、多数の建設員がこの事故で犠牲となった。

開業当初からこの路線は、孤立した支線ではなく国鉄網の延長として構想されていた。優等列車の多くは伊東からJRの伊東線、さらにその先の東海道本線へと直通しており、これは現在も変わらず、日中の普通列車の多くも熱海まで直通していた。当時の国鉄持ちの伊東線用編成が一等車(後のグリーン車)を連結していたこと、また沿線に別荘地が多く富裕層の需要が見込めたことから、伊豆急行は開業当初から二等車(後の普通車)だけでなく一等車(後のグリーン車)も保有し、自社の普通列車にも連結していた。のちには特別車両「ロイヤルボックス」も連結したが、現在では自社列車にグリーン車やロイヤルボックスを連結していない。初期の車両は親会社に頼っており、伊豆急行は1961年から1964年まで東急3000系を借用し、1960年代の夏期の輸送力増強には東急7000系・7200系の新造車を導入した。

JR網との関係は、その後の運行形態をずっと方向づけてきた。伊豆急下田 - 熱海間の普通列車の直通運転は、かつては国鉄、のちにJR東日本との相互乗り入れだったが、2002年12月1日以降は片乗り入れとなり、伊豆急行の列車が伊東線へ乗り入れる形となっている。現在の定期旅客列車は特急列車と普通列車の2種別のみで、観光シーズンなどの多客期には特急の増発や臨時の快速列車の運転が加わる。東京から伊豆急下田まで直通するJR東日本の特急には「踊り子」や豪華特急「サフィール踊り子」がある。

21世紀に入っても近代化が続いている。2010年3月13日にはICカード「Suica」が全線に導入され、その後PASMOなどSuicaと相互利用可能なカードも利用できるようになった。駅の無人化も進み、2012年4月1日に伊豆北川駅と稲梓駅が終日無人駅となり、2015年と2021年にもさらに無人化され、伊豆急行は2021年10月25日にJR東日本発行のSuicaカードの発売を終了した。2017年からは、JR東日本のATS-SNと互換性のある従来のATS-SiからATS-Pへの更新工事も進められている。

定期列車のほかにも、伊豆急行線は伊豆の観光と深く結びついている。2017年7月21日には、伊豆急行の2100系「リゾート21」を用いたクルーズ型観光列車「THE ROYAL EXPRESS」が、東海道本線の横浜と伊豆急下田の間で運転を開始した。また、下田に須崎御用邸があるため、私鉄では珍しくお召列車や御乗用列車が乗り入れており、令和初のお召列車は2019年に運転された。海沿いの車窓、直通の特急、そしてこれらの特別な列車が相まって、当線は伊豆半島を代表する観光鉄道の一つとなっている。

年表

  • 19353月30日:伊東線の最初の区間、熱海 - 網代間8.7kmが直流1,500Vで開業。
  • 193812月15日:伊東線が網代 - 伊東間8.3kmを延伸(直流1,500V)。それより南の工事は遅れ、第二次世界大戦により中止される。
  • 196112月10日:東急が設立した伊豆急行が、伊東 - 伊豆急下田間の伊豆急行線を全線開業。建設中、トンネル掘削時の源泉の浸み込みによる落盤事故で多数の建設員が犠牲となった。
  • 1961開業時より、伊豆急行は東急3000系を借用(1964年まで使用)。優等列車の多くは伊東線・東海道本線へ直通運転を行う。
  • 200212月1日:JR東日本との普通列車の相互直通運転が終了し、以後は当線から伊東線への片乗り入れとなる。
  • 20103月13日:全線にICカード「Suica」を導入し、PASMOなどSuicaと相互利用可能なカードも利用可能となる。
  • 20124月1日:伊豆北川駅と稲梓駅が終日無人駅となり、窓口閉鎖・券売機撤去となる。
  • 20177月21日:伊豆急行2100系「リゾート21」による観光列車「THE ROYAL EXPRESS」が、横浜 - 伊豆急下田間で運転を開始。
  • 2017JR東日本のATS-SNと互換性のあるATS-SiからATS-Pへの更新工事が、順次進められ始める。
  • 2019令和初のお召列車が運転される。下田の須崎御用邸のため、私鉄では珍しくお召列車・御乗用列車が乗り入れる。
  • 202110月25日:伊豆急行がJR東日本発行のSuicaカード(無記名式)の発売を終了。同年、沿線のさらなる駅も無人化される。

出典