歴史
路線は、寺の山門にある山門駅と、山上の多宝塔駅との間を、途中駅も行き違い設備もなく結んでおり、1両の車両が単線をただ往復するだけである。軌間は800ミリメートルで、89メートルの高低差を最急勾配499パーミル(約26度)で克服しており、日本のケーブルカーの中でも急な勾配のひとつである。駅は寺の伽藍と一体になっており、山門駅は1992年に完成した「普明殿」に納められ、多宝塔駅は路線の開業当時に建てられた「多宝塔礼堂」と駅舎を共にしている。
鞍馬寺は、足の弱い人や年配の参詣者の登山の負担を軽くするためにこのケーブルカーを敷設し、路線は1957年1月1日に山門 - 多宝塔間で開業した。当初は軌間762ミリメートルの線路に2両を走らせる、普通の鉄車輪式のケーブルカーであった。1970年代半ばには当初の設備が著しく老朽化し、定期点検の際にほぼ廃止寸前の状態であることが判明したため、路線は造り直され、1976年1月に、ゴムタイヤ式へと改められた軌間800ミリメートルの2代目車両で運行を再開した。
車両はその後も数回にわたって更新されており、車両には、伝承によれば若き日に鞍馬寺で修行したとされる武将・源義経の幼名「牛若丸」にちなんで「牛若號」の愛称がつけられている。3代目車両「牛若號III」は1996年8月8日に運行を開始し、これに伴って架線が廃止され、軌道脇から集電する方式へと改められた。その後、路線は設備と車両の全面的な更新のため2015年5月11日に運休し、2016年5月20日に4代目車両「牛若號IV」で運行を再開した。路線は山の天候にも試されており、英語の資料によれば、2018年の台風21号(ジェビ)で約180本の倒木が路線をふさいで甚大な被害を受け、およそ50日後に運行を再開したとされる。
鞍馬山鋼索鉄道を最も特徴づけているのは、通常の意味での運賃を取らないことであり、鉄道事業法による許可を受けた鉄道としては、現在唯一の運賃が無料の鉄道である(かつては箕面鋼索鉄道も無料であった)。来訪者は寺の諸堂の維持のために寄付(1口200円、小学生は100円)を行い、鞍馬寺はそのお礼として無料で乗車させる形をとっているため、200円の寄付が事実上の運賃となっている。寺はこの路線を営利事業ではなく、登るのが難しい人のための便宜と位置づけており、この支払いを運賃ではなく寄付として扱うことで、課税対象となる営利事業ではなく、寺院の非課税の宗教活動の一環にとどめている。
寺は、歩ける来訪者にはケーブルカーを使わず昔ながらの参道を歩くことをむしろ勧めており、その理由として、山を自らの足で歩いてこそ、その聖なる存在をより強く感じられることを挙げている。参道は由岐神社や「魔王の滝」などの見どころを通り、かつて若き義経も歩いた道である。ケーブルカーの山上側の終点は徒歩で寺の他の伽藍へとつながり、麓では山門駅が、叡山電鉄鞍馬線の鞍馬駅から徒歩約5分の位置にある。鞍馬線は、京都中心部から山の麓まで多くの来訪者を運ぶ在来線である。
年表
- 19571月1日:山門 - 多宝塔間が開業。当初は軌間762ミリメートルの鉄車輪式・2両のケーブルカーであった。
- 1974定期点検で設備の老朽化が判明し、路線はほぼ廃止寸前の状態となる(英語版ウィキペディアによる)。
- 19761月:ゴムタイヤ式に改められた軌間800ミリメートルの2代目車両で運行を再開。
- 19968月8日:3代目車両「牛若號III」が運行開始。架線が廃止され、軌道脇からの集電方式に改められる。
- 20155月11日:設備・車両の全面更新(改修工事)のため運休。
- 20165月20日:4代目車両「牛若號IV」で運行を再開。
- 2018台風21号(ジェビ)により約180本の倒木が路線をふさぎ甚大な被害を受け、約50日後に運行を再開(英語版ウィキペディアによる)。
出典
事実確認日:2026年6月14日