歴史
この路線は、奈良県の中央部に広がる古代大和の中心地を走る。沿線は古い名所・史跡に富み、車窓からは三輪山や大和三山を望むことができ、奈良駅から桜井駅までは日本でも有数の古い道である山辺の道(山の辺の道)に沿っている。こうした古代の風物の集積と、奈良を広く連想させる言葉「まほろば」とが結びついて、現在の愛称に意味を与えている。
桜井線は一つの計画として建設されたのではなく、二つの私鉄の路線をつなぎ合わせて成り立っている。奈良 - 桜井間は京都 - 奈良間を営業していた奈良鉄道が、桜井 - 高田間は湊町(現在のJR難波)- 奈良間などを擁した(初代)大阪鉄道が建設した。最初に開業した区間は高田 - 桜井間で、大阪鉄道が1893年5月23日に王寺 - 高田間を延伸する形で、約6マイルの区間として開業させた。1898年5月11日には奈良鉄道が京終 - 桜井間を開業させ、1899年10月14日には短い奈良 - 京終間を開通させて、二つの区間を一本の連続した鉄道として結んだ。
創業した両社はまもなく関西鉄道に吸収された。大阪鉄道は1900年6月6日に、奈良鉄道は1905年2月7日に、それぞれ路線を関西鉄道へ譲渡している。その関西鉄道も1907年10月1日に鉄道国有法により国有化され、この路線は官設鉄道の体系に組み込まれた。1909年10月12日、官設鉄道が正式な線路名称の制度を定めると、奈良 - 高田間は桜井線と名付けられ、以後この路線が正式に名乗り続ける名称となった。
20世紀前半を通じて、路線は設備を整え近代化していった。香久山駅・金橋駅が1913年に、長柄駅が1914年に、巻向駅が1955年に開業するなど駅が増え、1914年には桜井 - 奈良間で蒸気動車の運転が始まった。当初はマイルとチェーンで記録されていた営業距離は、1930年にメートル単位へ換算された。第二次世界大戦後は段階的に近代化が進み、1955年2月15日には全列車が気動車に統一され、また路線の主要な接続駅も、1963年に丹波市駅が天理市駅と改称され、1965年に移転・高架化のうえ天理駅と改称されて、姿を変えた。
桜井線は当初、大阪や京都から橿原・桜井・天理方面へ向かう旅客を運ぶ重要な動脈として構想されていたが、次第に静かなローカル線の役割へと移っていった。近鉄の前身である大阪電気軌道や奈良電気鉄道が、今日の近鉄大阪線・京都線・橿原線・天理線にあたる路線を建設し、利用客の多くはそれら利便性の高い路線へと流れていった。とりわけ近鉄大阪線とほぼ並行する桜井 - 高田間は利用が少なくなった。それでも運転設備は着実に改良され、1970年代に自動信号化が全線へ及び、1979年12月14日には列車集中制御装置(CTC)が導入され、奈良 - 高田間の全線が1980年3月3日に電化され、貨物営業は1983年4月1日に廃止された。
1987年4月1日の国鉄分割民営化により、桜井線はJR西日本に承継された。1991年12月には一部の列車でワンマン運転が始まり、2005年には全線がICOCAエリアに組み込まれた。現代における最も象徴的な変化は、設備ではなく名称によるものであった。平城遷都1300年を記念する2010年の催しや奈良デスティネーションキャンペーンに合わせ、JR西日本は愛称を公募し、「万葉まほろば線」を採用して、2010年3月13日のダイヤ改正からこの愛称が使用されるようになった。新型の227系1000番台電車は2019年3月16日から運転を開始し、同年6月1日から路線の定期運用に就いた。
年表
- 18935月23日:大阪鉄道が王寺 - 高田間を延伸する形で高田 - 桜井間(約6マイル)を開業。畝傍駅・桜井駅が開業。
- 18985月11日:奈良鉄道が京終 - 桜井間(約16.3km)を開業。京終・帯解・櫟本・丹波市(現・天理)・柳本・三輪の各駅が開業。
- 189910月14日:奈良鉄道が奈良 - 京終間(約1.7km)を開業して全通。
- 19006月6日:大阪鉄道が関西鉄道に路線を譲渡。
- 19052月7日:奈良鉄道が関西鉄道に路線を譲渡。
- 190710月1日:関西鉄道が鉄道国有法により国有化される。
- 190910月12日:国有鉄道線路名称制定により、奈良 - 高田間が桜井線となる。
- 19134月21日:香久山駅・金橋駅が開業。
- 19145月1日:桜井 - 奈良間で蒸気動車の運転を開始。8月20日に長柄駅が開業。
- 19304月1日:営業距離の単位がマイルからメートルに変更される(18.2マイル→29.4km)。
- 19552月15日:全列車が気動車に統一される。8月1日に巻向駅が開業。
- 19659月1日:天理市駅(1963年に丹波市駅から改称)が移転・高架化され、天理駅に改称される。
- 197912月14日:列車集中制御装置(CTC)が導入される(自動信号化は1970年代に全線へ及んでいた)。
- 19803月3日:奈良 - 高田間が直流1,500Vで電化される。
- 19834月1日:貨物営業が廃止される。
- 19874月1日:国鉄分割民営化により、西日本旅客鉄道(JR西日本)に承継される。
- 20103月13日:平城遷都1300年祭や奈良デスティネーションキャンペーンに合わせて公募で決定した愛称「万葉まほろば線」の使用が開始される。
- 20193月16日:227系1000番台電車が運転を開始(路線での定期運用は6月1日から)。
出典
事実確認日:2026年6月14日