歴史
この路線はもともと遊園地のアトラクションに由来する。1950年(昭和25年)、西武は軌間762ミリメートルの単線「軽便鉄道」である「おとぎ線」を開業した。この路線を走る蓄電池機関車牽引の「おとぎ電車」(または「おとぎ列車」)は、西武が村山貯水池(多摩湖)周辺に開発した遊園地を訪れる行楽客を運んだ。最初の区間である多摩湖ホテル前-上堰堤間が1950年8月1日に開通し、翌1951年(昭和26年)9月16日に上堰堤-ユネスコ村間が開通して、上堰堤駅は山口信号所に格下げされた。
1952年(昭和27年)7月15日、多摩湖ホテル前-ユネスコ村間(3.7キロメートル)の「おとぎ線」は遊戯施設から地方鉄道法に基づく地方鉄道に転換され、「山口線」と改称されて正式名称「西武山口線」となったが、「おとぎ電車」(または「おとぎ列車」)の名はその後も用いられた。運賃は西武鉄道の他の路線とは別建てで、長らくは蓄電池機関車牽引により季節限定で運転された。多摩湖ホテル前駅は1963年に西武遊園地駅に、1979年には遊園地前駅に改称されている。
日本の鉄道100周年を記念して1972年(昭和47年)6月2日に蒸気機関車の運転が開始され、以後、冬季を除いて他の軽便鉄道から譲り受けた古い客車を牽引する蒸気機関車列車も走るようになった。当初のドイツ製のコッペル機関車は借り物で老朽化していたため、1976年(昭和51年)12月17日に軌道改修のため一旦運休し、1977年(昭和52年)3月19日に運転を再開した。路盤を強化しトンネルを切り通し化した結果、蒸気機関車の重連運転も行われるようになった。
1980年代初頭には、施設・車両の老朽化に加え、多摩湖線から西武ライオンズの球場(現在のベルーナドーム)へのアクセス改善を図るため、大掛かりな作り直しが行われた。運輸省(当時)は1984年(昭和59年)4月16日に新交通システムへの改良を認可し、5月13日のさよなら運転セレモニーを経て、「おとぎ電車」は最後の運転を行い、5月14日に改良工事のため営業を休止した。手続き上は従来の軽便鉄道を一旦廃線扱いとした上で、新たに案内軌条式鉄道の免許を取得し、起終点駅を変更して線形を改良した。
1985年(昭和60年)4月25日、路線は現在の姿であるゴムタイヤ式の案内軌条式鉄道として西武遊園地-西武球場前間(2.8キロメートル)で再開業し、同日に残る遊園地前-ユネスコ村間が廃止され、運賃は西武鉄道の通常の体系に統合された。設計にあたってはコスト抑制が意識され、キャブシグナルとATOによる自動(無人)運転ではなく、通常の信号機を建植してATSを使用するワンマン運転とし、VVVF制御の実用化を念頭に置いた直流750ボルト電化が採用された。開業のために製造された4両編成3本の8500系は、西武鉄道初のVVVFインバータ制御車であった。
山口線は日本の案内軌条式鉄道の中で異色な存在である。2019年時点で、純民間企業が経営するAGT路線は山万ユーカリが丘線と西武山口線の2例のみであり、さらに西武山口線は、東京都から埼玉県へと都県境をまたぐ唯一の案内軌条式の鉄道路線である。駅付近を除き、大半の区間で村山下貯水池(多摩湖)の北岸に沿って走るが、貯水池周辺には水源かん養保安林が形成されているため、列車内から湖面が見える箇所は少ない。
近年の変化は、路線の性格を変えることなく路線を一新している。2021年(令和3年)3月13日に起終点が改称され、西武遊園地駅が多摩湖駅に、遊園地西駅が西武園ゆうえんち駅にそれぞれ改称された。また2021年(令和3年)4月1日から、西武は自社の太陽光発電所による電力でレオライナーを運行し、実質的に二酸化炭素排出ゼロとした。2026年(令和8年)3月27日には、三菱重工業製で約四十年ぶりの新車となるL00系が8500系の後継として運行を開始し、2027年度までに4両編成3本を導入する予定である。
年表
- 19508月1日:西武が軽便鉄道「おとぎ線」多摩湖ホテル前-上堰堤間(762ミリ軌間)を遊戯施設として開通。
- 19519月16日:上堰堤-ユネスコ村間を開通し、上堰堤駅を山口信号所に格下げ。
- 19527月15日:多摩湖ホテル前-ユネスコ村間(3.7キロ)を地方鉄道法に基づく地方鉄道に転換し「山口線」に改称。
- 19637月1日:多摩湖ホテル前駅を西武遊園地駅に改称。
- 19726月2日:日本の鉄道100周年を機に蒸気機関車の運転を開始。
- 197612月17日:改修工事のため運休。
- 19773月19日:運行再開。
- 19793月25日:西武遊園地駅を遊園地前駅に改称。
- 19844月16日:運輸省が新交通システムへの改良を認可。5月14日に「おとぎ電車」が最後の運転を行い、改良工事のため営業休止。
- 19854月25日:案内軌条式鉄道として西武遊園地-西武球場前間(2.8キロ)開業。同日に遊園地前-ユネスコ村間を廃止。西武初のVVVF車である8500系3本が運用開始。
- 20213月13日:起終点を改称(西武遊園地→多摩湖、遊園地西→西武園ゆうえんち)。4月1日から自社の太陽光発電による電力でレオライナーを運行し、実質的にCO2排出ゼロとした。
- 20263月27日:三菱重工業製のL00系(約四十年ぶりの新車)が運行を開始し、8500系を置き換える。
出典
事実確認日:2026年6月14日