歴史
線路名称上は安積永盛駅が終点とされるが、同駅で折り返す列車はなく、福島県側の全列車が東北本線の短い区間を経由して郡山駅まで直通するため、実際には水戸 - 郡山間を走る。沿線は茨城県北部の奥久慈地方を流れる久慈川の谷をたどり、清流と渓谷、袋田駅近くの袋田の滝で知られるこの一帯を抜けたのち、福島県南部の山あいへと登っていく。典型的な地方の普通鉄道路線であり、2024年3月16日改正のダイヤでは水戸 - 郡山間を全線通しで運行する列車は1日5往復のみである。一方、本線・支線双方の列車が走る水戸 - 上菅谷間は1時間に1 - 2本と最も列車密度が高く、常陸大子 - 郡山間は最も本数が少なく、日中に数時間運行されない時間帯がある。
路線の起こりは私鉄である。1892年、太田馬車鉄道に対して水戸から太田(現在の常陸太田市)方面への軌道敷設が許可されたが、これは蒸気を動力とする太田鉄道へと改められ、1897年11月16日に水戸 - 久慈川間が開業し、1899年に太田(現・常陸太田)まで延伸した。久慈川を渡る橋梁の工費や経営難に苦しんだ太田鉄道は、債務不履行に業を煮やした十五銀行が設備を差し押さえたのち設立された水戸鉄道(2代)に、1901年10月21日に事業を譲渡した。その後、営業権は安田財閥に移った。1918年に上菅谷 - 常陸大宮間を開業したのはこの水戸鉄道であり、これにより当初の上菅谷 - 常陸太田間が支線となった。
本線は段階的に北へ延ばされた。水戸鉄道は1922年から1927年にかけて常陸大宮から常陸大子方面へと延伸し、常陸大子までの区間は1927年3月10日に開業した。同年12月1日に水戸鉄道は買収・国有化され、水戸 - 常陸大子間および上菅谷 - 常陸太田間を合わせて水郡線と名付けられた。福島県側からは鉄道省が別の線を建設しており、1929年には二つの区間を区別するため水郡南線・水郡北線と改称され、1929年から安積永盛側を、1930年代を通じて常陸大子側を建設した。最後に残った磐城棚倉 - 川東間が1934年12月4日に開業して水戸 - 安積永盛間が全通し、両線は再び水郡線の一つの名称に統合された。
非電化の路線に適した気動車運転は1930年代から順次導入され、1959年までに旅客列車はすべて無煙化(ディーゼル化)された。貨物営業は縮小され、上菅谷 - 常陸太田間の支線では1982年に、水戸 - 安積永盛間の本線では1987年に廃止された。列車集中制御装置(CTC)は1983年6月1日に全線で使用が開始された。1987年4月1日の国鉄分割民営化により、水郡線はJR東日本が承継した。全区間でワンマン運転が行われており、現在の使用車両はキハE130系気動車で、2007年1月19日に運行を開始し、同年9月までに従来のキハ110系を置き換えた。
水郡線は近年、二度にわたって自然災害で寸断された。2011年の東日本大震災では線路や施設が被害を受けて全線が不通となり、同年4月に段階的に運転を再開した。より甚大だったのが令和元年東日本台風(台風19号)で、2019年10月13日、豪雨により袋田 - 常陸大子間の第六久慈川橋梁が落橋し、磐城浅川 - 里白石間の第二社川橋梁が流出して全線が不通となった。運転は代行バスで不通区間を補いながら区間ごとに再開されたが、落橋した久慈川橋梁の復旧には長い時間を要し、袋田 - 常陸大子間が再開して全線で運転が再開されたのは台風から1年5か月余り後の2021年3月27日であった。
年表
- 18927月:太田馬車鉄道に対し、水戸から太田(現・常陸太田市)方面への軌道敷設が許可される。後に蒸気動力の太田鉄道に改められる。
- 189711月16日:太田鉄道が水戸駅 - 久慈川駅間を開業(路線最古の区間)。
- 1899太田鉄道が久慈川駅 - 太田駅(現・常陸太田駅)間を延伸開業し、現在の支線終点に達する。
- 190110月21日:太田鉄道の破綻を受け、十五銀行など債権者が設立した水戸鉄道(2代)に事業が譲渡される。
- 1918水戸鉄道が上菅谷駅 - 常陸大宮駅間を開業し、当初の上菅谷 - 常陸太田間が支線となる。
- 19273月10日:常陸大子駅まで延伸。12月1日:水戸鉄道が国有化され、水戸 - 常陸大子間と上菅谷 - 常陸太田間が「水郡線」と名付けられる。
- 1929鉄道省が安積永盛側に水郡北線を開業。既設線は水郡南線と改称される。
- 193412月4日:最後の磐城棚倉駅 - 川東駅間が開業して全通し、水郡南線・水郡北線が「水郡線」に統合される。
- 195911月1日:旅客列車をすべて無煙化(ディーゼル化)。
- 198210月1日:上菅谷駅 - 常陸太田駅間の貨物営業が廃止される。
- 19836月1日:全線で列車集中制御装置(CTC)の使用を開始。
- 19874月1日:水戸駅 - 安積永盛駅間の貨物営業が廃止。国鉄分割民営化に伴い、水郡線はJR東日本が承継する。
- 20071月19日:キハE130系気動車が運行を開始。同年9月までにキハ110系を置き換える。
- 20113月11日:東日本大震災で線路・施設が被害を受け全線不通となり、4月に段階的に運転を再開する。
- 201910月13日:令和元年東日本台風で第六久慈川橋梁(袋田 - 常陸大子間)が落橋し、第二社川橋梁(磐城浅川 - 里白石間)が流出して全線不通となる。
- 20213月27日:橋梁の復旧により袋田 - 常陸大子間が再開し、台風から1年5か月余りを経て全線で運転が再開される。
出典
事実確認日:2026年6月14日