歴史
この路線は鉄道敷設法に由来し、その別表第74号に規定された「岐阜県大垣ヨリ福井県大野ヲ経テ石川県金沢ニ至ル鉄道」の一部で、樽見線はその最初の区間として計画された。建設は太平洋戦争前の1935年に着手され、戦時中は中断したが、1952年に再開された。1956年3月20日には最初の区間である大垣 - 谷汲口間(21.7キロ)が国鉄樽見線として開業し、貨物営業は大垣 - 美濃本巣間のみであった。1958年4月29日には美濃神海(現在の神海)までの短い延伸区間が開業した。
神海より先では計画線の建設が行き詰まった。1970年11月に日本鉄道建設公団が樽見への延長工事を開始したが、ルートが特別天然記念物の根尾谷断層に掛かり、地震学会により工事が中止された。その後ルート変更により文化庁の承認を受けて工事は再開されたものの、根尾谷断層による工事難航が続いた。人口が少なく、人の流れも大垣ではなく岐阜に向かっていた沿線は、本巣に誘致された住友セメントの工場から積み出されるセメント輸送を当初から頼みの綱としてきた。
1980年12月に国鉄再建法が公布されると、利用の少ない盲腸線であった樽見線は第1次特定地方交通線に選定され、廃止対象となった。この頃にはトンネルが貫通し第十根尾川橋梁も完成して、延伸工事は完成時の工事費換算で約七割に達していたが、1981年に凍結された。路線を失うことを避けるため、沿線では第三セクター方式での存続が選ばれ、貨物専業の西濃鉄道や住友セメントを主な株主として樽見鉄道が設立され、1984年10月6日に国鉄樽見線が廃止され、代わって樽見鉄道樽見線が開業して、いくつかの駅が改称された。
第三セクターとしての運営は順調に始まり、列車の増発などの積極策が奏功して好調な滑り出しとなった。これを受けて、工事進行が全体工事費相当で約七割まで進んでいた神海 - 樽見間の工事が1986年に再開され、1989年3月25日に神海 - 樽見間の10.9キロメートルが延伸開業して、路線は現在の終着駅まで全通した。高科・鍋原・日当・高尾・水鳥・樽見の六つの新駅がこれとともに開業し、鉄道はようやく本巣の淡墨桜の足元まで達した。
住友大阪セメント岐阜工場向けのセメント貨物は大垣 - 本巣間で運行され、本巣駅から工場までの専用線も存在して、最盛期には営業収入の約4割を占めていた。輸送量は1990年度の約54万トンから2002年度には約17万トンまで減少し、2004年に住友大阪セメントが2005年度末で鉄道輸送の利用を打ち切ることを表明した。2006年3月28日限りでセメント貨物列車の運行を終了し、大垣 - 本巣間の貨物営業は2006年4月30日に正式に廃止されて、樽見線は旅客専用の運行となった。
貨物輸送を失って以降、鉄道は、沿線のモレラ岐阜への買い物利用(2006年に専用駅が設けられた)や、谷汲地区・樽見地区への観光利用といった旅客施策や、無人駅を世話するボランティアの「市民駅長」などのコスト削減策に頼ってきた。全列車が各駅に停車する気動車の普通列車で、春には臨時列車の運転や定期列車の増結を行う特別ダイヤ「桜ダイヤ」が組まれ、日本三大桜の一つで国の天然記念物でもある淡墨桜への見物客を運ぶ。織部より先の渓谷では路線が根尾川に沿って走り、桜・新緑・紅葉・雪といった四季折々の景色を楽しむことができる。
年表
- 1935鉄道敷設法別表第74号の大垣 - 大野 - 金沢鉄道の一部として計画された路線の建設が着手される(太平洋戦争前。戦時中は中断し、1952年に再開)。
- 19563月20日:国鉄樽見線 大垣 - 谷汲口間(21.7km)が開業。貨物営業は大垣 - 美濃本巣間のみ。
- 19581月15日:木知原駅開業。4月29日:谷汲口 - 美濃神海(現・神海)間(2.3km)が延伸開業。
- 19602月15日:横屋駅開業。
- 197410月1日:美濃本巣 - 美濃神海間(7.7km)の貨物営業を廃止。
- 19819月18日:第1次特定地方交通線として廃止承認。約七割まで進んでいた神海 - 樽見間の延伸工事は凍結される。
- 198410月6日:国鉄樽見線(24.0km)廃止、第三セクターの樽見鉄道樽見線(23.6km)開業。美濃本巣を本巣、美濃神海を神海、本巣北方を北方真桑に改称。
- 1986第三セクターとしての好調な滑り出しを受け、神海 - 樽見間の延伸工事が再開される。
- 198811月1日:大垣 - 本巣間がタブレット閉塞から特殊自動閉塞になる。
- 19893月25日:神海 - 樽見間(10.9km)が延伸開業し全通。高科・鍋原・日当・高尾・水鳥・樽見の各駅開業。
- 20024月1日:織部駅開業。
- 20064月21日:モレラ岐阜駅開業。4月30日:大垣 - 本巣間(16.2km)の貨物営業廃止(貨物列車の運転は3月28日まで)。路線は旅客専用となる。
- 202012月6日:美江寺 - 北方真桑間の一部が高架化され、岐阜県道53号と立体交差化し、2か所の踏切を除却。
- 202412月7日:神海・樽見両駅の行き違い設備撤去に伴い、本巣 - 樽見間を自動閉塞式からスタフ閉塞式に変更。
出典
事実確認日:2026年6月14日