歴史
この路線は国ではなく、日本初の私設鉄道会社である日本鉄道によって建設された。東京と本州北端の青森を結ぶ計画は、1870年代初頭に政府へ提言された構想と、1880年ごろの華族らによる鉄道建設運動から生まれたものである。建設は区間ごとに進められ、最初の区間である上野 - 熊谷間が1883年7月28日に日本初の民営鉄道として開業した。1885年には宇都宮まで延伸されたが、当初は利根川を渡船で連絡しており、1886年に利根川橋梁が完成すると上野と宇都宮が直通で結ばれた。その後、鉄道は郡山・仙台・一ノ関を経て段階的に北へと延び、1890年には盛岡に達した。
1891年9月1日には盛岡 - 青森間が開通し、上野 - 青森間が全通して、当時の日本で最も長い連続した鉄道路線となった。当初の直通列車は1日1往復のみで、片道およそ26時間半を要した。この時点では路線は日本鉄道奥州線と呼ばれており、「東北本線」の名称が用いられるようになったのは、日本鉄道が国有化された後の1909年のことである。日本鉄道は1906年11月1日に鉄道国有法により国有化され、以後この路線は官設鉄道の幹線となった。
1925年に東京駅が開業すると、東北本線は上野から新しい東京駅まで延長され、その後長年にわたり、この区間を介して東海道本線と東北本線を直通する列車が数多く運行された。電化は首都から外側へ向けて段階的に進められ、まず上野 - 田端間の短い区間が1909年に直流1,500ボルトで電化され、1928年に赤羽、1932年に大宮、1959年に黒磯へと延びた。黒磯より北は交流20,000ボルトで電化され、1960年に福島、1961年に仙台、1965年に盛岡、そして1968年に青森へと達して、東京 - 青森間の全線電化が完成し、複線化もおおむね完了した。これらの完成を機に、1968年10月にはいわゆる「ヨンサントオ」と呼ばれる全国規模の白紙ダイヤ改正が実施され、当線の特急・急行列車が大きく増発された。
1982年の東北新幹線開業は、この路線の役割を大きく変えた。長距離優等列車は新幹線経由で運行されるようになり、輸送力に余裕が生じた在来線では中距離の普通列車が増発された。おおむね旧来の経路に並行する新幹線は、かつて東北本線の都市間列車が使っていた用地も引き継いだ。1990年には上野 - 黒磯間に「宇都宮線」の愛称が制定され、利用者がこの区間を「東北本線」と呼ぶことは少なくなっていった。
その後、新幹線の北への延伸が当線の北端を削り取っていった。2002年12月1日に東北新幹線が八戸まで延伸されると、並行する在来線のうち盛岡 - 目時間は第三セクターのIGRいわて銀河鉄道に、目時 - 八戸間は青い森鉄道に経営移管され、東北本線は二つに分断されて営業キロは631.3キロメートルとなり、山陰本線に次ぐ日本第二の長さの在来線となった。2010年12月4日に新幹線が新青森まで延伸されると、残る八戸 - 青森間も同様に青い森鉄道へ移管され、青森県内から「東北本線」の名称は消滅し、路線は現在の535.3キロメートルへと縮小して、山陰本線・東海道本線に次ぐ日本第三の長さの在来線となった。
現在、東北本線の正式な区間は東京 - 盛岡間のみであり、一般に「東北本線」の名称が用いられるのは主に黒磯 - 盛岡間で、東京 - 黒磯間は宇都宮線として知られている。黒磯で電化方式が直流から交流に変わるため、同駅を通して運行される定期旅客列車はなく、また全線を直通する定期旅客列車も存在しない。南側では2015年の上野東京ラインの開業によって東京と上野が直通運転で再び結ばれており、この幹線は今日、密度の高い近郊・地域輸送と、首都圏と本州北部・北海道を結ぶ多数のJR貨物の貨物列車を担っている。
年表
- 18837月28日:日本鉄道が最初の区間である上野 - 熊谷間を日本初の民営鉄道として開業。
- 1885宇都宮まで延伸。当初、利根川は渡船で連絡していた。
- 18866月17日:利根川橋梁が完成し、上野 - 宇都宮間が直通で結ばれる。
- 188712月:郡山 - 塩竈間が開通し、福島・仙台を経て仙台地区に到達。
- 1890盛岡まで延伸(一ノ関 - 盛岡間が11月1日に開通)。
- 18919月1日:盛岡 - 青森間が開通して上野 - 青森間が全通。当時の日本最長の連続路線となる。直通は1日1往復、片道約26時間半。
- 190611月1日:鉄道国有法により日本鉄道が国有化され、当線は官設鉄道の幹線となる。
- 1909それまで日本鉄道奥州線と呼ばれていた路線が東北本線と改称される。上野 - 田端間が直流1,500Vで電化。
- 192511月1日:東北本線の起点が東京駅となり、上野から東京まで延長される。
- 1959直流電化(1,500V)が、1928年の赤羽、1932年の大宮を経て黒磯まで延伸される。
- 19688月22日:交流電化(20kV)が青森に到達し、東京 - 青森間が全線電化。10月には全国的な「ヨンサントオ」ダイヤ改正が実施される。
- 1982東北新幹線が開業。長距離優等列車は新幹線へ移り、余裕の生じた在来線では中距離普通列車が増発される。
- 19903月10日:上野 - 黒磯間に「宇都宮線」の愛称が制定される。
- 200212月1日:東北新幹線八戸延伸に伴い、盛岡 - 目時間をIGRいわて銀河鉄道に、目時 - 八戸間を青い森鉄道に経営移管。営業キロは631.3kmとなり、山陰本線に次ぐ第二の長さとなる。
- 201012月4日:東北新幹線新青森延伸に伴い、八戸 - 青森間を青い森鉄道に経営移管。青森県内から「東北本線」が消滅し、営業キロは535.3kmとなり、山陰本線・東海道本線に次ぐ第三の長さとなる。
- 2015上野東京ラインが開業し、当線南端で東京 - 上野間の直通運転が復活する。
出典
事実確認日:2026年6月14日