歴史
この事業は、宇都宮東部の慢性的な道路渋滞を背景に生まれた。日本の高度経済成長期にあたる1960年代以降、市の東部には平出工業団地や清原工業団地といった大規模な工場地区が造成され、やがて数万人の通勤者を集めるようになった。これらの地区は市中心部から遠く、鬼怒川に架かるわずかな橋を渡らなければ到達できず、全国でも有数の自動車依存度の高い県にあって、深刻な日々の渋滞を招いた。さらに、宇都宮を貫くJR東北本線は南北方向に走り、市には東西方向の鉄道軸がこれまで存在しなかったため、東部の多くの地域は公共交通の便に乏しかった。
これを解決しようとする構想は数十年前にさかのぼる。1987年には宇都宮市が市の東西を結ぶモノレールの構想を打ち出したが、実現には至らなかった。1993年には当時の栃木県知事が「新交通システム構想」を掲げ、本格的な検討が初めて始まった。2001年には市と県が採用する方式をライトレールに定め、2003年には宇都宮駅を越えて市の東西を結ぶ路線の計画が示された。しかし、採算性への懸念や、市・県・地元のバス鉄道事業者である関東自動車の間の意見の対立から、計画は長らく停滞した。
国が新たなライトレール整備への手厚い補助を打ち出し、関東自動車が経営危機により経営権を移したことで状況は変わり、2013年に宇都宮市は路線の建設を正式に決定した。続いて法的・技術的な手続きが進められ、2016年9月26日には国土交通大臣が軌道運送高度化実施計画を認定し、軌道法に基づく事業特許が与えられた。2018年3月には工事施行が認可され、同年5月28日に起工式が挙行されて、当初は2022年3月の開業が目指された。
開業は、交通量の多い交差点での工事が難航したことなどから、まず2023年3月へ、次いで2023年8月26日へと、複数回にわたり延期された。試運転では深刻な事態も起きた。2022年11月19日未明、宇都宮駅東口停留場付近で分岐器の試験を行っていた際に試運転中の列車が脱線し、先頭車の前部台車と中間車が軌道を外れたが、負傷者はなかった。新車両を用いた習熟運転は2023年4月に始まった。
路線は2023年8月26日についに開業し、宇都宮駅東口停留場と芳賀・高根沢工業団地停留場の間の14.6キロメートル全線を、19の停留場で結んだ。日本初の全くの新規ライトレール路線であるのに加え、栃木県内に路面電車が復活するのは、1968年の東武日光軌道線の廃止以来55年ぶりのことであった。「ライトライン」の愛称は2023年9月28日に正式に発表された。
利用者数は当初から予測を大きく上回って推移した。開業からわずか82日後の2023年11月15日に累計100万人を達成し、2024年2月には200万人、2024年9月13日には500万人を突破した。これは予測を約20パーセント上回る数字であった。2025年8月19日には開業725日目で1,000万人に達し、これは目標より約6か月早い達成であった。開業初年度(開業から2024年3月31日まで)には約271万3,000人を運んだ。この初期の成功により、同線は日本のコンパクトシティ交通の手本として広く引き合いに出されるようになった。
路線は現在、宇都宮駅を越えて西側へ延伸され、市中心部を貫く東西軸という長年の目標がいよいよ実現しようとしている。宇都宮市は、宇都宮駅東口の終点から大通りを経由し東武宇都宮駅付近を通って栃木県教育会館付近まで、約5キロメートル・12停留場の延伸を計画している。延伸に向けた軌道運送高度化実施計画は2025年10月29日に国土交通省へ申請された。事業費は約698億円(2025年10月時点の試算)で、2036年3月の開業が目指されている。
年表
- 1987宇都宮市が市の東西を結ぶモノレール構想を提案するが、実現しなかった。
- 1993栃木県知事が「新交通システム構想」を掲げ、東西を結ぶ路線の本格的な検討が初めて始まる。
- 2001宇都宮市と栃木県が、新交通システムの方式をライトレールとすることを決定。
- 2003宇都宮駅を越えて市の東西を結ぶ路線の計画が示される。
- 2013国が手厚い補助を打ち出し、地元の関東自動車が経営権を移したことを受け、宇都宮市が路線の建設を正式に決定する。
- 20169月26日:国土交通大臣が軌道運送高度化実施計画を認定し、軌道法に基づく事業特許が与えられる。
- 20183月20日:国土交通省が工事施行を認可。5月28日:起工式を挙行。当初は2022年3月の開業を目指していた。
- 202211月19日未明:宇都宮駅東口停留場付近で分岐器試験中に試運転列車が脱線。先頭車の前部台車と中間車が軌道を外れたが、負傷者はなかった。
- 20238月26日:宇都宮駅東口~芳賀・高根沢工業団地間の14.6キロメートル全線(19停留場)が開業。全くの新規ライトレール路線としては日本初で、栃木県内では1968年の東武日光軌道線廃止以来55年ぶりの路面電車となった。
- 202311月15日:開業からわずか82日目で、累計利用者数が100万人に達する。
- 20239月28日:愛称「ライトライン」が正式に発表される。
- 20249月13日:累計利用者数が500万人を突破。予測を約20パーセント上回る。
- 20258月19日:開業725日目で累計利用者数が1,000万人に達する。目標より約6か月早い達成であった。
- 202510月29日:宇都宮駅を越える約5キロメートルの西側延伸(12停留場、事業費約698億円、2036年3月開業目標)に向けた軌道運送高度化実施計画が国土交通省に申請される。
出典
事実確認日:2026年6月14日