新幹線車両·約6分で読めます

新幹線500系電車

500 Series Shinkansen

新幹線500系電車は、西日本旅客鉄道(JR西日本)が、自社路線である山陽新幹線の対航空競争力を高めるため、それまでの新幹線車両を上回る高速性能を目指して開発した高速車両である。1997年3月22日のダイヤ改正で営業運転を開始し、「のぞみ」として東海道・山陽新幹線で運用されたのち、2010年に東海道新幹線の定期「のぞみ」運用から離脱し、山陽新幹線の各駅停車「こだま」へ転用された。JR西日本が自社単独で開発した新幹線車両は、出典の版の時点で本形式が唯一である。

A 500 series V8 formation at Himeji Station.
A 500 series V8 formation at Himeji Station. — Santetsu · CC BY 4.0 · Wikimedia Commons

歴史

本形式は試験車から発展した。JR西日本は1992年に6両編成の試験車500系900番台「WIN350」(「West Japan's Innovation for operation at 350 km/h」の略、当初の呼称は「500X」)を製作し、350 km/h運転を目指す次世代新幹線の技術を試験した。その成果が量産車に反映され、主変換装置のシステムなどは500系900番台から踏襲されている。

意匠設計はドイツの工業デザイナー、アレクサンダー・ノイマイスターが担当した。最大の特徴は先頭形状で、高速走行時のトンネル微気圧波対策として、先頭車は全長27 mの半分以上にあたる約15 mにわたり断面を絞り込み、旅客機よりもはるかに鋭いジェット戦闘機のような外観となっている。この15 mという長さは320 km/h運転を前提としたCFD(数値流体力学)解析によって導き出された。車体高・室内高を保ちつつ断面積を縮小するため、断面は他形式とは異なる円形に近い形状とされ、300系比で約1割小さくなっている。丸みを帯びた形状はカワセミのくちばしなどに例えられる生物模倣に基づくとされ、走行抵抗や騒音も300系より低減された。集電装置(パンタグラフ)には、モータースポーツの空力技術やフクロウの羽根を参考にした低騒音の「T型パンタグラフ」が採用された。独特の形状と塗装により、子どもを含め大きな人気を得た。

走り装置は徹底して高速性能を追求している。新製時の16両編成は、初代0系以来となる全電動車方式で、最高出力は18,240 kW(W1編成。W2編成以降は17,600 kW)に達し、これは300系の約1.5倍で、車輪駆動の鉄道車両として極めて優れた重量出力比を実現した。車体はアルミ合金製で、ろう付けしたアルミハニカムパネル構造を採用して軽量化と防音性能の向上を図ったが、製造コストが大幅に上昇したため、次の700系ではより安価なアルミダブルスキン構造が採られ、本構造は500系のみとなった。コンピューター制御のアクティブ/セミアクティブサスペンションと車体間のヨーダンパーにより、高速時の乗り心地を確保している。ロングノーズのため先頭車の定員が減るが、JR東海から設計段階で300系の定員を下回らないよう要請されたため、運転席寄りの客用扉の廃止やシートピッチの短縮、洗面所の削減などにより、16両で1,324名(300系より1名多い)を確保した。製造数は9編成のみと少なく、製作費は日本語版では1編成約46億円・1両約3億円(300系より6億円弱高い)とされる(英語版は1編成約50億円〔5 billion yen〕と記す)。

A 500 series W2 formation at Odawara Station.
A 500 series W2 formation at Odawara Station.JobanLineE531 at Japanese Wikipedia · CC BY 3.0 · Wikimedia Commons

JR西日本が1994年9月に発表し、第1編成は1995年に試験用として落成、1997年3月に営業運転を開始した。16両編成9本(W1〜W9)は1998年までに出そろった。500系は日本で初めて営業運転で最高300 km/hを達成した新幹線であり、JR西日本は後にこれを国内初の営業時速300キロと位置づけている。車両は320 km/h運転を前提に設計され、環境面の条件もクリアしていたが、W1編成の完成前に発生した阪神・淡路大震災を受けて非常制動距離の厳守が求められたことや費用対効果の検討から、営業最高速度は300 km/hとされた。山陽新幹線ではW編成が300 km/hで「のぞみ」に充当されたが、カーブの多い東海道新幹線では300系と同じ270 km/hに抑えられている。また多客期には16両の500系が「ひかりレールスター」に充当されることもあった。ロングノーズのため運転席を大きく後退させた結果、先頭車の客用扉は片側1箇所となり、車両ごとの座席数も他形式と異なったため、2003年の「のぞみ」自由席設定後やダイヤ乱れ時には不利となった。

300 km/h運転と居住性を両立させたN700系が2007年以降に増備されると、500系は徐々に「のぞみ」から離脱し、2010年2月28日に定期「のぞみ」運用を終えた。JR西日本は廃車とせず、原型9編成のうち8編成を2008年から2010年にかけて8両編成へ短縮・改造し、山陽新幹線新大阪〜博多間の「こだま」へ転用して、同区間の0系を置き換えた。改造された編成は500系7000番台に区分され、編成記号はV2〜V9となった。最初の8両編成は2008年3月28日に報道公開され、同年12月1日から1日12本の「こだま」で運用を開始し、営業最高速度は285 km/hに引き下げられた。2009年3月改正からは、定員の多いV編成が朝夕の通勤・通学時間帯に重点的に充当された。2023年3月27日時点で、「こだま」用の在籍は8両編成6本(V2〜V4・V7〜V9)であった。

V2編成は特別塗装車としても運用された。2015年11月7日からは、山陽新幹線運行開始40周年とテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』放送開始20周年を記念したコラボレーション企画「500 TYPE EVA」の全面塗装をまとい(高速走行のためラッピングではなく全面塗装が採用された)、実物大コックピットを備えた展示車などを連結した。当初は2017年3月までの予定だったが、好評のため2018年5月13日まで延長された。その後、同じV2編成はサンリオとのコラボレーション「ハローキティ新幹線」(2018年3月発表)に改装され、2018年6月30日から山陽新幹線の「こだま」で運行を開始した。ハローキティ新幹線の運行は2026年5月17日に終了した。

500 series car 522-1 at Hitachi's Kasado Works.
500 series car 522-1 at Hitachi's Kasado Works.W1B901 · CC BY-SA 4.0 · Wikimedia Commons

500系は終焉期を迎えている。2024年2月14日、JR西日本は残る6編成のうち4編成を2026年度末までに用途廃止し、16両編成のN700系4本を8両編成化して置き換える計画を発表した。さらに2024年7月24日には、残る2編成も2027年までに引退させる方針を示した。第1編成W1のうち2両が保存されており、先頭車だった521-1は2016年4月開館の京都鉄道博物館に(2018年初頭には「500 TYPE EVA」塗装で展示)、もう一方の先頭車522-1は山口県下松市の日立製作所笠戸事業所に保存されている。500系は第41回(1998年)鉄道友の会ブルーリボン賞、および1996年に通商産業省(現・経済産業省)のグッドデザイン選定を受けた。独特の形状から『勇者王ガオガイガー』のライナーガオや『新幹線変形ロボ シンカリオン』など、ポップカルチャーにも広く登場している。

年表

  • 1992JR West builds the six-car 500-900 series "WIN350" experimental train to test technology for next-generation Shinkansen aimed at 350 km/h.
  • 1994The production 500 series is first announced by JR West in September.
  • 1997Revenue service begins with the 22 March timetable revision; the 500 series becomes the first Shinkansen in Japan to run at 300 km/h in regular service (on the San'yō Shinkansen).
  • 1998All nine sixteen-car W sets (W1–W9) have been delivered; the type receives the 41st Blue Ribbon Award.
  • 2008First rebuilt eight-car set unveiled to the press on 28 March; eight-car 500 series enters San'yō Kodama service on twelve daily runs from 1 December, at a reduced 285 km/h maximum.
  • 2010The last regular 500 series Nozomi run takes place on 28 February; the type is withdrawn from Tōkaidō Nozomi service.
  • 2015Set V2 begins operating in the special "500 Type Eva" livery from 7 November (40th anniversary of the San'yō Shinkansen / 20th of Neon Genesis Evangelion).
  • 2018The "500 Type Eva" livery ends on 13 May; set V2 re-enters service as the "Hello Kitty" Shinkansen on 30 June.
  • 2024JR West announces (14 February) plans to retire four of six remaining sets by end of 2026, and (24 July) to retire the last two sets by 2027.
  • 2026The "Hello Kitty" Shinkansen makes its final run on 17 May.

出典